夢千一夜 第五夜
彼女はぼんやりと窓から見える風景を眺めていた。
20時36分。
この時間にいつも横切る飛行機を見るのだった。
ある日、ふと目をやった先にそれを見つけた彼女は
それから毎晩、窓際に来てそれが横切るのを待つようになった。
一日を終えて、色々な事を思い返しているうちに、
少しずつ時計の針が進み
それが横切るのを見てから
家事に取り掛かったりもした。
実は、飛行機と言うのは結構こういう目線で眺められている事も多いのではないか
と彼女は考えた。
多少の誤差はあるものの、
毎日決まった時間に空を横切る光を
人知れず心待ちにしている人が
自分の他にもいるんじゃないか。
いや、必ずいるはずだ。
そう思うと、
そよ風に吹かれたかのように、一日の疲れが少しだけ軽くなるのを感じた。