夢千一夜 第四夜
扉を開けると、そこにはいつものように彼が居た。
彼はもう齢90を迎えようとしていたが、身のこなしはまるで活発な青年のように軽く
頭の方もしっかりしていた。
彼の特徴は何と言っても髪の毛にあった。
髪の毛の長さが尋常ではなく、普段巻き上げているそれを解けば10尺になろうというものだった。
集落には沢山の子供がいたが、皆同じ名前で彼を呼んだ。
そして、彼もその名前に満足しているようだった。
「ジッシャク」という名前だった。
本当の名前はもう誰も覚えておらず、当の本人ですら長い間自分の名前を忘れていたのだった。
そう、その日が来るまでは。
ある日、彼の棲家に一人の男性が姿を現した。
その男もまたかなりの高齢であり、長い髪の毛を巻き上げていた。