かもしれないブログ

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映画 モテキを観た。

☆☆★★★

モテキ DVD通常版

モテキ DVD通常版

31歳の青年、幸世(森山未來)と4人の女性の物語。

4人との関係プラス幸世の仕事面という、

5つの波が物語を構成している。

1つの山が去った後、すぐ次の山が来るので2時間が短く感じられるテンポのいい映画。

幸世の部屋に大量の雑誌やら漫画やら雑貨やらが溢れていて

それを見るのも面白い。

しかし、違和感があったのは

幸世の暮らしぶりだ。

都心で一人暮らしでこれだけの物持っててしかもお洒落。

もう十分やないか!!十分恵まれてる

もう十分だからアンタは行ってよし!という感じ。


ダンスシーンが凄い

作中前半、幸世が浮かれてperfumeと一緒にダンスする箇所が見所。

あの部分だけでもDVDをレンタルして観た価値があった。

森山未來のダンスが凄いのを始めて知った。

幸世の部屋にみゆき(長澤まさみ)が来た晩

幸世が、床で眠るみゆきの寝顔を撮った後に、ベッドに飛び乗るシーンがある。

身のこなしがすごい。


見ていてキツイ

全体的に、それぞれの内面をえぐるような心理描写の為、見ていてきつかった。

中盤で、るみ子(麻生久美子)が幸代を押し倒すシーン。

夜道を二人で帰り、一旦分かれた後、もう一度るみ子が幸世を追いかけ思いを伝えに行く場面。

幸世は、みゆきに振られたからと言って、るみ子に乗り換えるとかは出来ない。付き合えないと言う。

それに対して、るみ子が必死になり、せめて友達でいたい、と言う。

るみ子は、

ダメなところは何所なのか、何が重いのか、どうすれば良いのか、何が足りないのか

教えてほしいと、泣きながら幸世に迫る。

その行為自体が重たく、幸世は完全に醒めてしまう。

るみ子が、土下座してでも友達でいて欲しいといった風なのが、見ていてつらかった。

展開としては、トンネル内で会話が始まり、そこから幸世が去り、それをるみ子が追いかけるという形を取っている。

トンネル内では、心理の深い部分で核心を突く会話がされていて、

トンネル=深層心理という部分が感じられた。

るみ子が幸世を追いかけるシーンは鬼気迫るものがあり、ここが物語で最もストレスのかかる場面だった。

それと全く同じ行動を、幸世は後にみゆきに対して取る事になる。



幸世の仕事サクセスストーリー

幸世のサクセスストーリー的な面がある。

最初はグウタラなのだが、

ちゃんと働こう
   ↓ 
編集の仕事に就く
   ↓
取材先で写真を撮り忘れる・ミスばかりで先輩の素子(真木よう子)にバカにされる
   ↓
取材相手の、みゆきの彼氏を怒らせてしまう

が、みゆきの彼氏は冷静さを失わず大人の対応を取り、幸世は完全に敗北する
   ↓
みゆきの彼氏を記事でけちょんけちょんに書く

と言った感じで進む。


仕事面で、素子が幸世の先輩として指導にあたるが、その言葉は聞いていて爽快な感じもある。
 
「もっと自由に、思いのままに、そういうのは一部の人間にしか許されていない!だが、お前はそうじゃない!

だから黙って働けバカ!!」

というような台詞。刺さる。



幸世が、取材相手のみゆきの彼氏を怒らせた日、現場からの帰り道で、

素子は幸世に仕事を任せ、

(それはロックフェスを主宰するみゆきの彼氏についての)記事を仕上げてくるように命令する。

仕事を任せた素子も、それに応えた幸世も偉い。

しかし、幸世は感情に任せて好き放題に記事を書いてしまう。

その夜、幸世はみゆきの家に行き、告白し、振られてしまう。

幸世は、何とかしてみゆきに触れようと食い下がるのだが、

その姿は、るみ子の幸世に対してとった行動と重なる部分がある。

雨が降りしきる中、ずぶ濡れになって、泣きながら帰る幸世。

その晩、幸世は昼間に書いた記事を全部消し、歯を食いしばって書き直す。

事務所に移り、徹夜で書き上げる。

翌朝、事務所に来た編集長に、幸世は会社の一員として認められる。

そこには、最初にあったダメダメな、愚図だったた幸世は微塵も存在せず、

仕事に対する姿勢を激変させ、一本の記事を書き上げた幸世の姿があった。



みゆきの台詞

物語の終盤、ロックフェスで幸世はみゆきを見つけ、追いかける。

追いかけ、泥水に二人共転んでしまう。

そこでみゆきは、

「出会いたくなかった。幸世君と!」

と言う。

このセリフがこの物語の核なのではないかと感じた。

それまで、たくさんの人と交際して来たみゆきは、過去に誰にも言わなかったであろう言葉を幸世に言う。

みゆきが言った「出会いたくなかった」とは、

つまり幸世が、みゆきの人生の流れに影響を与えてしまう程の存在になっていたという事だ。



その後、泥水の中で幸世とみゆきはお互いを見て微笑み、笑いあう。

物語の流れからすると、この二人は相性がいいようには思えない。

それぞれの人物を、それぞれの方向に歩ませるのが自然だと感じた。

その方が、幸世の、男として、人としての成長という面から、突き抜け感が出たんじゃなかろうか。


森山未來のダンスの切れと、劇中歌、それぞれの心理描写、どれも優れているのだが、

物語全体を覆う、もやっとした感覚が抜けなかった。

素子(真木よう子)との接点が会社のみだったのが残念。